大阪大学大学院医学系研究科 小児科学

小児骨疾患 関連情報サイト

お問い合せ

ご挨拶

Greeting

病気のご紹介

Disease

論文紹介

Paper

医療関係者の皆様へ

Medical Personnel

大阪大学大学院医学系研究科 小児科学

小児骨疾患 関連情報サイト

大阪大学大学院医学系研究科 小児科学

小児骨疾患 関連情報サイト

お問い合せ

病気のご紹介

HOME病気のご紹介 > X連鎖性低リン血症性くる病

一覧にもどる

X連鎖性低リン血症性くる病

ヒトの骨はカルシウムやリンなどのミネラルが適切に作用することで、正常な強度が維持されています。このことを“骨の石灰化”と呼びますが、小児期にカルシウムやリンが不足すると骨の石灰化が障害され、骨がやわらかい“くる病”と呼ばれる状態となります。くる病の中で特に体内のリンが不足したために生じるものを“低リン血症性くる病”と呼びます。この低リン血症性くる病にはいくつか種類がありますが、その中でもっとも頻度が高いものがこの“X連鎖性低リン血症性くる病”です。別名、ビタミンD抵抗性くる病とも呼ばれます。

原因

ヒトの体内では血中のリン濃度(細胞外液リンプール)は一定に維持されるように調節されています。食物から摂取されたリンが腸管から吸収され、体内に入ります。余ったリンは腎臓から尿中に排泄されますが、一部のリンは腎臓で再吸収されます。(図1)

この血中リン濃度の維持に重要な役割を果たしているホルモンの一つに線維芽細胞成長因子23(fibroblast growth factor 23: FGF23)があります。FGF23はビタミンDの活性化を妨げることで腸管からのリンの吸収を抑えたり(活性型ビタミンDは腸管からのリンの吸収を高める作用があります)、腎臓でのリンの再吸収を行う蛋白を減らすことでリン再吸収を減らし尿中へのリンの排泄を増加させたりすることで血中リン濃度を低下させる作用があります。(図2)

X連鎖性低リン血症性くる病の患者さんはこのFGF23が増加することによって低リン血症を来し、くる病を発症します。FGF23が増加する原因はPHEX(Phosphate Regulating Endopeptidase Homolog X-Linked)と呼ばれる遺伝子がうまく働かないことによります。このPHEXという遺伝子がX染色体にあるためX連鎖性低リン血症性くる病という病名であり、遺伝性があります。

図1

図2

症状

O脚やX脚といった骨変形やそれに伴う歩行時の身体の揺れが認められます。その他にも成長障害や関節の腫れ、背骨の曲がり、“頭蓋癆(ろう)”という頭の骨が薄く指先で押すとへこむような症状を認めることもあります。

治療

X連鎖性低リン血症性くる病では上述のように体内のリンが不足するため、不足するリンを補充するためにリン製剤の内服を行います。またFGF23の増加により活性型ビタミンDも不足するため、活性型ビタミンD製剤の内服も併用されます。

近年、過剰なFGF23の作用を抑える抗FGF23抗体製剤が新規開発され、2019/12より日本国内においても治療が開始されています。患者さんの病態に応じてどのような治療戦略が適切か主治医と相談して決定していきます。

厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)
「ホルモン受容機構異常に関する調査研究」

一覧にもどる