大阪大学大学院医学系研究科 小児科学

小児骨疾患 関連情報サイト

お問い合せ

ご挨拶

Greeting

病気のご紹介

Disease

論文紹介

Paper

医療関係者の皆様へ

Medical Personnel

大阪大学大学院医学系研究科 小児科学

小児骨疾患 関連情報サイト

大阪大学大学院医学系研究科 小児科学

小児骨疾患 関連情報サイト

お問い合せ

病気のご紹介

HOME病気のご紹介 > 軟骨無形成症

一覧にもどる

軟骨無形成症

こどもの身長が伸びていくのには、骨の端の方にある成長軟骨帯と呼ばれる場所が重要です。そこでは軟骨が縦方向に順序よく成熟して骨となり、骨が伸びていくので身長が伸びていくことになります。軟骨無形成症ではこの軟骨の成長が妨げられているために、骨がうまく伸びていけなくて腕や脚が短くなり、身長が低くなってしまいます。軟骨無形成症の大人の身長は男性で平均130cm、女性で124cm前後と言われています。

原因

軟骨無形成症では、軟骨細胞を制御しているFGFR3(Fibroblast growth factor receptor 3; 線維芽細胞増殖因子受容体3型)に異常(遺伝子変異による)が生じており、軟骨の成熟を抑制する力が強いため、骨の成長が妨げられて腕や脚の骨が太くて短くなります。

この遺伝子変異が受け継がれるとお子さんも軟骨無形成症となります。私たちは2対の遺伝子を持っており、こどもにはその内の一方が受け継がれます。FGFR3に対する遺伝子も2対あり、軟骨無形成症では一方は正常で一方に変異がある状態となっており、どちらの遺伝子が受け継がれるかによって症状の有無が定まることになります(常染色体優性遺伝形式)。ご両親の遺伝子に変異がない場合でも、生まれるまでの経過の中でFGFR3の遺伝子に変異が生じ軟骨無形成症のお子さんが生まれることがあります。

症状・診断

腕や脚が短く、身長が低いことに加えて、頭が大きめで顔の作りが小さめなので、額が前に出た感じになります。また手の指も太くて短く、手を広げた時に中指と薬指の間がやや広がったようになります(三尖手と言います)。

診断は体の特徴のほか、レントゲン写真での骨の特徴を確認することでなされます。またFGFR3の遺伝子の変異があるかどうかを調べることでも診断が可能です。

合併症

体のバランスとして頭の大きさが際立つため、赤ちゃんの時は首の坐りなどの運動発達が遅くなります。運動発達の極端な遅れや腱反射の亢進などの神経学的な異常がある場合は、頭蓋骨の底にある首へとつながる穴(大後頭孔)の成長が十分でなく、そこを通る脊髄を圧迫している可能性が考えられます(大後頭孔狭窄)。MRIなどの画像検査での精査が大切です。頭部の画像検査で脳室拡大を認めることがあります。多くの場合、脳室内の圧(脳圧)は正常で経過観察可能ですが、神経学的な異常を認める場合には精査が必要です。

また軟骨無形成症では顔の骨の成長が妨げられているため、気道が狭く、喉の奥にあるアデノイドや扁桃が相対的に大きくなるため、睡眠中にいびきが目立ち、ひどい場合は起きている時でも口呼吸となる場合があります。睡眠時に無呼吸を起こし(睡眠時無呼吸症候群sleep apnea syndrome; SAS)、その程度がひどいと右心不全や突然死のリスクとなるため注意が必要です。アデノイドの近くには中耳と繋がる耳管の開口部があり、アデノイドが相対的に大きいと耳管の交通が妨げられ中耳炎を繰り返すことがあります。

整形外科的な合併症には脊柱管狭窄、変形性関節症などがあり、学童期から症状を認めることもありますが30歳代で腰痛、間欠性跛行などの症状が増えてきます。座位が不安定な乳児期に長時間の座位保持をすると腰の骨の変形が生じやすくなり、脊柱管狭窄のリスクが高まると言われています。

治療

日本国内では軟骨無形成症の低身長に対して成長ホルモン治療の適応があり、一定の基準を満たせば治療を受けることが可能です。新規治療薬の開発も進められています。

手術的な治療として脚延長術があります。長期間の治療となるため、本人の希望も含め、じっくりと吟味してから治療決定することが望ましいと考えます。また身長とは直接関係はしませんが、腕が短いことで生活の中での不自由を感じる場合に上腕の骨切延長術の選択について検討することがあります。

厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)
「指定難病と小児慢性特定疾病に関連した先天性骨系統疾患の適切な診断の実施と医療水準およびQOLの向上をめざした研究」

一覧にもどる